不動産を売却して得た利益は「譲渡所得」と呼ばれ、給与所得など他の所得とは分けて税額が計算されます。この譲渡所得の計算方法と、売却する不動産の「所有期間」によって税率が大きく変わる仕組みを理解することは、納税額を把握し、適切な資金計画を立てる上で不可欠です。
ここでは、譲渡所得の基本的な計算式から、所有期間に応じた税率の違いまで、順を追って詳しく解説していきます。
譲渡所得の計算式
譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 売却価格 – ( 取得費 + 譲渡費用 ) – 特別控除
それぞれの項目について見ていきましょう。
- 売却価格(譲渡収入):不動産を売って買主から得た代金の総額です。
- 取得費:売却した不動産を購入したときの代金や、購入時にかかった仲介手数料、リフォーム費用などの合計額です。建物の取得費は、年数の経過による価値の減少分(減価償却費)を差し引いて計算します。
- 譲渡費用:売却するために直接かかった費用のことです。仲介手数料や印紙税、測量費などがこれにあたります。
- 特別控除:マイホームの売却であれば「3,000万円特別控除」などが適用できる場合があります。
親から相続した不動産などで購入時の契約書がなく取得費が不明な場合は、売却価格の5%を「概算取得費」として計上することができます。ただし、実際の取得費が5%より大きいことが証明できれば、そちらの金額を使うことができます。
所有期間で税率が変わる!短期と長期の違い
譲渡所得にかかる税率は、不動産を所有していた期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2つに区分され、税率が大きく異なります。
この所有期間は、売却した年の1月1日時点で判断されるのが重要なポイントです。単に購入日から売却日までの期間ではありません。
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短期譲渡所得: 所有期間が5年以下の場合
税率:39.63%(所得税30.63% + 住民税9%) -
長期譲渡所得: 所有期間が5年を超える場合
税率:20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
※所得税には復興特別所得税(2.1%)が含まれています。
ご覧の通り、税率はほぼ2倍の違いがあります。売却のタイミングを12月にするか、年明けの1月にするかで税額が大きく変わる可能性があるため、売却時期の計画は非常に重要です。
【具体例】課税譲渡所得1,000万円の場合の納税額
各種費用や特別控除を差し引いた後の課税譲渡所得が1,000万円だった場合、納税額は以下のように変わります。
短期譲渡所得(所有期間5年以下)の場合
1,000万円 × 39.63% = 396万3,000円
長期譲渡所得(所有期間5年超)の場合
1,000万円 × 20.315% = 203万1,500円
この例では、納税額に約193万円もの差が生じることが分かります。
まとめ
譲渡所得とそれにかかる税金の計算は、不動産売却における資金計画の根幹をなす部分です。特に、所有期間による税率の違いはインパクトが大きいため、ご自身の不動産の所有期間を正確に把握しておくことが大切です。計算が複雑で分かりにくいと感じたら、ぜひ専門家にご相談ください。