これまでの売却活動が実を結び、購入希望者から「この物件を買いたいです」という意思表示、「購入申込書(買付証明書)」が提示されました。まずはおめでとうございます!ゴールはもうすぐそこです。
しかし、ここで舞い上がってすぐに承諾してしまうのは禁物です。購入申込書には、価格だけでなく、引き渡しの時期や支払い方法など、重要な条件が記載されています。特に、希望価格よりも低い金額での「価格交渉」が入ることも珍しくありません。
ここでは、後悔のない契約を結ぶために、購入申し込みが入った際にどう考え、どう判断すれば良いのかを具体的に解説します。
まずは申込書の内容を冷静にチェック
不動産会社の担当者から購入申込書が届いたら、以下の3つのポイントを必ず確認しましょう。
- 購入希望価格
売り出し価格に対して、いくらの価格が提示されていますか?(希望価格よりも低い価格を提示されることを「指値(さしね)」と言います) - 手付金の額
契約時に支払われる手付金はいくらになっていますか?(一般的には売買価格の5%〜10%が目安です) - 希望条件
- 引渡し希望時期はいつになっていますか?(あなたの引越しのスケジュールと合っていますか?)
- 住宅ローンの利用はありますか?(「住宅ローン特約」が付いているかを確認します。これは、万が一買主のローン審査が通らなかった場合、契約を白紙撤回できるという特約です)
- その他に、売主側で対応が必要な特別な要望(例:特定の設備の修繕など)は記載されていませんか?
「価格交渉」どう対応する?3つの返答パターン
もし、希望よりも低い価格(指値)での申し込みだった場合、すぐに「NO」と断る必要はありません。不動産会社の担当者と相談しながら、以下の3つの選択肢を軸に冷静に対応を考えましょう。
「提示された価格では売れません。売り出し価格のままであればお売りします」と返答する方法です。
【有効なケース】物件の人気が高く、他にも購入希望者が現れる可能性が高い場合や、これ以上は絶対に譲れないという明確な価格ラインがある場合に有効です。
買主の希望価格と、こちらの希望価格の中間あたりの金額を「着地点」として逆提案する方法です。
【有効なケース】交渉の余地は示しつつ、こちらの希望も伝えたいバランスの取れた対応です。「〇〇万円までお値下げいただければ、すぐに契約します」という買主の熱意が高い場合に有効です。
価格は満額のままで、代わりに他の条件で譲歩する姿勢を見せる方法です。
【有効なケース】「価格は譲れないが、契約はまとめたい」という場合に有効です。例えば、「価格はこのままでお願いしたいのですが、その代わり、ご希望に合わせて引渡しの時期を調整します」「〇〇の設備はこちらで修繕します」といった提案が考えられます。
総合的に判断することが大切
価格交渉では、つい金額の大小だけに目が行きがちです。しかし、本当に大切なのは「あなたにとって、最も良い条件で安心して取引できる相手か」を見極めることです。
例えば、少し低い価格提示であっても、引渡しの時期がこちらの希望にぴったり合っていたり、住宅ローンを使わない現金購入でスムーズな取引が見込めたりする買主であれば、総合的に見て「良いご縁」と判断できるかもしれません。
一人で悩まず、必ずパートナーである不動産会社の担当者に相談してください。担当者は、買主側の事情や不動産市場の動向も踏まえた上で、あなたにとって最善の判断ができるようサポートしてくれるはずです。
まとめ
購入の申し込みは、売却の成功に向けた大きな一歩ですが、ここで冷静に判断することが最終的な満足度を左右します。提示された条件を多角的に検討し、信頼できる担当者と相談しながら、納得のいく契約を目指しましょう。