売り出してしばらくたつのに決まらないと、「何が悪いのか」「値下げをするべきか」で迷います。
売れない理由は、買い手がどの段階で止まっているかを見ると、ある程度見分けられます。値下げも、決まった時期や幅があるわけではなく、売り出してからの反響と期間を見て判断します。
目次
「売れない」と考えるのは、売り出してからどれくらい?
首都圏の中古マンションは、レインズ(不動産会社同士が物件の情報を共有する仕組み)に登録してから成約するまで、2025年は平均82.5日でした。
3か月弱です。
ただし、この平均は売れた住戸だけで出したものです。
売れずに残っている住戸は入っていません。
2025年に首都圏で、売り出しから12か月以内に売れた中古マンションのうち、それぞれの期間までに売れた割合は、次の通りです。
| 売り出しから | 売れた割合 |
|---|---|
| 1か月以内 | 22.7% |
| 3か月以内 | 50.8% |
| 6か月以内 | 73.8% |
| 9か月以内 | 85.1% |
3か月以内に売れたのは、半分ほどです。
3か月たって決まっていなくても、それだけで珍しいことではありません。
不動産会社と結ぶ媒介契約も、3か月を一区切りにするのが一般的です。
契約を続けるかどうかを決める区切りで、値下げの時期が決まっているわけではありません。
一方で、売り出しが長引くほど、最後に売れる価格は、最初の売り出し価格から大きく下がる傾向があります。
今の東京は、売れるまでに時間がかかりやすい
2026年の夏から、東京の中古マンションは売れ方が変わってきています。
売りに出る住戸が増え、売れる件数が減っています。
東京23区と、そのうち都心3区(千代田区・中央区・港区)について、2026年8月の数字を1年前の同じ月と比べると、次の通りです。
| 東京23区 | 都心3区 | |
|---|---|---|
| 売り出し中 | +26.3% | +58.1% |
| 新しい売り出し | +26.2% | +49.1% |
| 売れた件数 | −20.6% | −38.9% |
(2026年8月の前年同月比)
都心3区では、売り出し中の住戸が1年で6割近く増え、売れた件数は4割近く減りました。
買い手から見ると、比べられる住戸が多い市場です。
売れずに翌月も売り出しが続いている東京23区の住戸のうち、直近3か月に値下げをしたのは48.9%でした。
1年前は36.8%です。
高めの価格で売り出しても買い手がつかず、値下げをする売主が増えてきています。
こうした市場の動きや金利は、売主には変えられません。
売れない理由を考えるときは、変えられないものと、変えられるもの(価格・見せ方・不動産会社の動き)を分けて見ると、打ち手が絞れます。
どこで止まっているかで、理由を見分ける
買い手は、物件を見つけてから申し込むまで、4つの段階を進みます。
売れないときは、まずどの段階で止まっているかを確かめます。
見られていないのか、見られているのに問い合わせが無いのかで、打つ手は大きく違います。
段階ごとに、伸びない原因と確かめることを並べると、次の通りです。
買い手が申し込むまでの、4つの段階
止まっている段階は、閲覧・問い合わせ・内覧の数で分かります。
閲覧
ポータルサイトで見られる
伸びない原因
- 掲載サイトが少ない
- 検索条件から外れる
確かめることどこに載っているか
問い合わせ
詳しく知りたい
伸びない原因
- 周りより価格が高い
- 写真と説明が弱い
確かめること近所の売り出し価格
内覧
部屋を見に行く
伸びない原因
- 内覧の日程が合わない
- 図面で弱点が見える
確かめること内覧を受けられる日
申込み
買いたいと伝える
伸びない原因
- 室内の印象が良くない
- 近くと比べて高い
確かめること内覧した人の感想
見られていないなら載せ方を、見られているのに問い合わせが無いなら価格と写真を見直します。
どの段階で止まっているかが分かれば、売れない理由はおおよそ見分けられます。
段階ごとの数(閲覧・問い合わせ・内覧)は、担当者に聞けば分かります。
売れない理由と、それぞれの打ち手
よく見られる理由は、価格、写真と説明、内覧の3つです。
いくつかが重なっていることもあります。
売り出し価格が、周りの住戸より高い
一番多い理由です。
買い手は、同じ駅、同じくらいの広さと築年数の住戸を並べて見ています。
その中で高ければ、問い合わせの段階で外されます。
同じマンションの中に似た広さの住戸が売りに出ていると、買い手はまず価格を比べます。
タワーマンションでは、同じ時期に何戸も売りに出ることが珍しくなく、階・向き・眺望・広さで細かく比べられます。
売主の希望価格は、買ったときの価格、ローンの残り、一番高かった査定額に引きずられやすいものです。
売り出し中の住戸には値下げが続いているものも多く、売り出し価格だけを見ると、相場を高く受け取ってしまいます。
打ち手
- 近所の売り出し価格と合わせて、実際に売れた成約価格も見る
- 比べられる住戸との差を、階・眺望・室内の状態で説明できるか確かめる
- 説明できないなら、価格を合わせる
写真と説明で、良さが伝わっていない
多くの買い手は、ポータルサイトの一覧で写真の1枚目を見て、開くかどうかを決めます。
暗い写真、散らかった部屋、点数の少なさは、それだけで問い合わせを減らします。
都心のマンションは、管理の質と立地が価格を支えています。
その情報が伝わっていなければ、価格だけで比べられてしまいます。
打ち手
- 写真の1枚目を、明るく広く見えるものにする
- 写真の点数を増やす
- 間取り図、日当たり、管理の状態、修繕の履歴を載せる
内覧で、印象が下がっている
内覧はあるのに申込みが無いときは、室内の印象を見直します。
内覧の日程が限られていると、買い手は他の住戸を先に見に行きます。
先にリフォームをするのは、おすすめしません。
買い手は自分の好みで直したいことが多く、かけた費用を価格に乗せられないことがよくあります。
打ち手
- 物を減らし、明るさ・水回りの清潔さ・においを整える
- 直すのは、ハウスクリーニングと壊れた設備の修理まで
- 週末の夕方や平日の夜など、内覧を受けられる時間帯を増やす
値下げの前に、不動産会社の動きを確かめる
問い合わせや内覧が少ないとき、原因が価格ではなく、不動産会社の動き方にあることもあります。
値下げの前に、次の3つを確かめてください。
- 他の会社から紹介してもらえる状態か
専任媒介・専属専任媒介なら、登録証明書の二次元コードから、レインズの取引状況を確かめられます(2025年1月から)。
覚えがないのに「売主都合で一時紹介停止中」なら、他の会社から買い手を紹介してもらえない状態です。事実と違う登録は、行政処分の対象です。- 報告に、反響の数が入っているか
専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上、活動の報告があります。
閲覧・問い合わせ・内覧の数と、内覧した人の感想が入っているかを見ます。- 値下げや買取を勧める根拠があるか
会社が価格について意見を言うときは、根拠を示す義務があります。
値下げや買取を勧められたら、根拠になる成約事例と反響の数を聞きます。
契約の見直しも、打ち手の一つです。
専任媒介と専属専任媒介の契約は3か月までで、更新するかどうかは売主が決めます。
複数の会社に頼む一般媒介に広げるか、1社に絞って任せるかは、物件と会社の動き方によって向き不向きがあります。
登録証明書の見方は、媒介契約の記事にまとめています。
値下げを考える目安
値下げは、価格が原因のときに効く打ち手です。
写真と説明、内覧、不動産会社の動きに原因があるなら、下げても決まらず、値下げの幅だけが大きくなります。
先にそこを確かめてから、価格を見直します。
長引くほど、値下げの幅は大きくなる
2025年の首都圏の数字では、売れるまでの期間が長いほど、最初の売り出し価格からの下がり幅が大きくなっています。
12か月以内に売れた住戸の数字で、売れずに売り出しをやめた住戸は入っていません。
| 売れるまで | 下がり幅 | 1億円で売り出したら |
|---|---|---|
| 1か月以内 | −2.3% | 約230万円 |
| 3か月以内 | −3.6% | 約360万円 |
| 6か月 | −8.2% | 約820万円 |
| 8か月 | −10.8% | 約1,080万円 |
売り出しから時間がたつと、あとから出てきた住戸に埋もれ、「長く売れていない住戸」として見られるようになります。
そこから値下げを重ねても、最初の反響は戻りにくくなります。
「高めに出して、売れなければ下げればいい」という売り方は、今の市場では手元に残る金額を減らしやすくなっています。
なお、2024年の同じ調べでは、5か月目以降の下がり幅は4〜6%台にとどまっていました。
長引いたときの下がり方は、その年の市場によって変わります。
価格を見直す時期
見直す時期の目安は、売り出してから最初の1か月と、3か月です。
最初の1か月は、新着として一番多くの買い手に見られる時期です。
問い合わせと内覧の数で、価格が合っているかが分かります。
2025年に1か月以内に売れた住戸の約半数は、最初の売り出し価格のまま売れています。
3か月は、売れた住戸の半数ほどが決まる時期で、媒介契約もここで一区切りすることが多くあります。
それまでの反響と、近所で決まった成約価格、会社の動きを合わせて、価格と頼む会社をまとめて見直します。
売り出しから3か月までに見るものを並べると、次の通りです。
売り出しから3か月までに見ること
最初の1か月
新着として一番見られる- 問い合わせと内覧の数を見る
- 少なければ、写真と価格を直す
1〜3か月
比べられる住戸が増える- 近所の売り出しと成約を見る
- 内覧した人の感想を聞く
3か月
媒介契約が一区切りする- 反響と成約、会社の動きを見る
- 契約を更新するかを決める
下げるときの考え方
下げるときは、次の点を意識します。
- 金額ではなく、割合で考える(1億円の住戸で50万円は0.5%)
- ポータルサイトの価格の区切り(例えば「1億円以下」)をまたぐと、それまで検索に出ていなかった買い手の目に入る
- 小刻みに何度も下げず、根拠を持って一度で見直す(何度も下げると、まだ下がると様子を見られやすい)
見直す時期と幅を売り出す前に担当者と決めておくと、期限が近づいてから慌てて大きく下げるのを防げます。
値下げで、手元に残る金額はどう変わるか
値下げをすると、仲介手数料も少し下がります。
1億円の売り出し価格を9,500万円に見直して、その価格で売れた場合を比べると、次の通りです。
| 単位:万円 | 1億円 | 9,500万円 | 差 |
|---|---|---|---|
| 売却価格 | 10,000 | 9,500 | −500 |
| 仲介手数料 | 336.6 | 320.1 | −16.5 |
| 手元に残る金額 | 9,663.4 | 9,179.9 | −483.5 |
利益が出て税金がかかる場合は、売却価格が下がると税金も下がります。
売り出し価格は、相場と合っている?
町名と広さを入れるだけで、同じエリアで実際に売れた値段から、今の相場がすぐ分かります。
お名前・ご連絡先の入力は要りません。
それでも売れないときの選択肢
価格と見せ方を見直しても決まらないときは、次の選択肢があります。
まず考えたいのは、頼む不動産会社を替えることです。
不動産会社を替える
同じ住戸でも、どこに載せるか、写真と説明をどう作るか、内覧にどう対応するかは、会社と担当者によって変わります。
価格を下げる前に、売り方そのものを見直せる会社に頼み直すことで、反響が変わることがあります。
替えやすいのは、媒介契約の期間が終わるときです。
期間が終わるときに更新しなければ、別の会社と結び直せます。
期間の途中で売主の都合でやめると、それまでにかかった費用を請求されることがあるので、契約書の期間を先に確かめます。
新しい会社に聞いておくこと
- 今の価格と反響を見て、何が原因だと考えるか
- 載せ方・写真・価格を、どう変えるか
- 報告に、閲覧・問い合わせ・内覧の数を入れてくれるか
当センターでも、他の会社で売り出し中の住戸のご相談をお受けしています。
今の売り出し価格と反響をうかがい、見直すところをお伝えします。ご相談はこちら
出し直す
掲載が長く続くと、「長く売れていない住戸」として見られます。
いったん売り出しをやめ、間を置いてから出し直すと、新しい売り出しとして見てもらいやすくなります。
ただし、同じ価格・同じ写真のまま出し直しても、反響は変わりません。
止めている間に、売り方を整えてから出し直します。
出し直す前に整えること
- 価格を、近所の成約価格に合わせて決め直す
- 写真を撮り直し、説明と間取り図を見直す
- 頼む会社と、媒介契約の種類を見直す
止めている間も、管理費や修繕積立金、固定資産税はかかり続けます。
期限がある方は、出し直す時期を先に決めておきます。
貸す
転勤などで、いずれ戻る予定があるなら、貸すことも選べます。
ただし、自分が住んでいた家の3,000万円の特別控除は、住まなくなった日から3年目の年末までに売らないと使えません。
貸す前に、売るときの税金も確かめておきます。
不動産会社に買い取ってもらう
不動産会社が直接買う方法です。
買い手を探す時間がかからず、早く確実に売れます。
そのかわり、価格は仲介で売るより下がります。
まとめ
売れない理由は、買い手が「見つける・問い合わせる・内覧する・申し込む」のどこで止まっているかを見ると、見分けられます。
見られていないなら載せ方を、見られているのに問い合わせが無いなら価格と写真を見直します。
3か月で決まらなくても、それだけで珍しいことではありません。
一方で、長引くほど値下げの幅は大きくなります。
最初の1か月の反響と、3か月の区切りで、価格と会社の動きを見直してください。
値下げの前には、レインズの取引状況、報告の中身、写真と内覧の状態を確かめます。
価格以外に原因があるなら、下げても決まりません。
よくあるご質問
3か月売れないのは、何かがおかしいのでしょうか。
ただ、最初の1か月の問い合わせや内覧が少なかったなら、写真と価格を見直す時期です。
内覧はあるのに、申込みが入りません。何を見直せばいいですか。
片付け・明るさ・においと、同じ建物や近所の住戸と比べた価格を見直します。内覧した人の感想を担当者に聞くと、手がかりになります。
値下げは、いくらずつするものですか。
小刻みに何度も下げるより、反響と成約価格を根拠に一度で見直すほうが、様子を見られにくくなります。
不動産会社を替えたほうがいいですか。
住みながらでも売れますか。
内覧を受けられる日や時間帯を増やすことも大切です。